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名栗で 子育て

教えて!校長先生!#1

名栗小学校の校長、水島岳史先生に、聞いてみたいことを聞いてみるインタビュー連載企画です。

第1回目となる今回は、水島先生が教員を目指すまでのいきさつや、大切にしていることを聞いてみました。

根っこにあったのは「1人ひとりの良さ」を、ちゃんと見てあげたい、大切にしてあげたい、そして、それができるような学校にしたい、という想い。

今回の担当は、名栗小に子どもを通わせる保護者3名。山本、若野、吉田です。


ーー 校長先生、今日はよろしくお願いします!

はい、ではよろしくお願いします。なんだか、緊張しちゃうな(笑)

ピンクのスーツを着てました

ーー では、最初に先生の簡単な経歴を教えてください。

大学を卒業して、すぐ教員になりました。日高市、所沢、鳩山町、それから飯能と移ってきて、今、幸いなことに、この素敵な学校で校長をやらせて頂いております。

ーー 卒業後すぐに教員なんですね。勝手に、どこか寄り道してきたんじゃないかな、ってイメージ持ってました(笑)

そうなんですか?でも、確かに、高校卒業して1度就職してます。
それで、働きながら2部の学校に通ってたんですけど、その時一緒に遊んでいた仲間が、ほとんど2世で。つまり、親の会社継げばいいや、みたいな子がたまたま多くて。それで、このまま卒業しても、俺の将来、いいとこ、こいつらの運転手か?みたいな(笑)。
そう思うようになって、もう1度大学に入り直すことにして。
親の援助も無しで、1人で生活しながらの再受験だったので、苦労もしましたけど。なんとか教育学部に入ることが出来まして。


ーー その頃の経験が、今もどこか活かされている部分ありそうですね。

活かされるというほどのことでもないかもしれませんが、影響はあると思いますよ。社会のことを教わるというか、勉強になった部分は多かったかな。

ーー 先生が、いつも先頭に立って、名栗小の舵取りしてる感じというか、俺が責任持つから、ここ変えてみようよ、みたいなところを、外から見ていても感じていて。いい意味で先生らしくないなと思っていて。それってどうしてなのかなって聞いてみたかったんです。

学校の常識は社会の非常識、みたいなことって、我々が教員になった頃からずっと言われているわけです。もちろん、先生たちも、それぞれ一生懸命なんですけど。でも、やっぱり、普通に勉強して、大学行って、22歳くらいから「先生、先生」って言われるわけですから、まあ社会とのズレのようなものは出てきちゃう。
なので、「子どもにとってはどうなのかな?」というところで、毎日考えるようにはしていて。
それは、まわりの先生たちにも、いつも話をしていることなんですけど。

ーー なるほど。今年、名栗小では、”良い子の決まり”をやめたり、強制の宿題もなくなりましたよね。また、大きく舵取りしたなー、と思いましたけど(笑)。

それも、「子どもにとってはどうなのかな?」を考えていく中で、一律に子どもに何かをやらせる、強制するっていうのは違うんじゃないかなって。学校教育が、家庭の時間に入ってまで、宿題をやらせるんじゃなくて、やる気持ちにさせる。これが学校の仕事かな、とは思っています。

ーー 教員になられた時から、そういった考え方だったんですか?

いや、やっぱり若い頃は、周りの先生と同じように「やるべきことはやれ」って言ってましたよ。
そういうやり方をやめたのは、何かきっかけがあったわけじゃないですけど。
でもやっぱり、最初から自分の中にそういう部分があったのかもな、とは思いますね。
例えば、校長先生や学校の先生が集まる時に、紺か黒のスーツでネクタイしてきなさい、っていうのが嫌で、ピンクのスーツで行ったりして。

ーー ピンクのスーツ!?それは、いつ頃のお話ですか?

初任。教員始めた時からです。

ーー (一同大笑い)

「聞ける人」になれたらいいかな


ーー 色々な仕事がある中で、教員という職業を選んだのはどうしてですか?

まあ、我々の時代、ひどかったんです。荒れてる時代。それこそ、天井やら壁やらは穴だらけ。

ーー 先生たちが竹刀持ってた時代ですよね。

そうそう。あれ、絶対鉄だかなんだか、入ってるんですよね!だってめっちゃ重いんだもん(笑)
そういうので、殴られたり、ひどいなーって中で、1人だけ、いろんな話をちゃんと聞いてくれる先生がいたんです。
その先生とは今でも交流があるんですけど。
それで、先生やるのも、おもしろいかなって思ったんですよね。「聞ける人」になれたらいいかなって。

ーー それは、入学式での校長先生の挨拶でも感じました。「もっとしたい」「それは嫌だ」と言えるような子になりましょうって。えっ!全部聞いてくれるんだ!って。

言われた通りやる、って子じゃない子の方が、素敵だなっていつも思っています。
子どもはちょっとヤンチャなくらいでいいですよ。もうね、かわいくてしょうがないですよ、そういう子たち。なぜなら、主張するから。俺はこうなんだって言える子が多いから。
ヤンチャって言っても小学生ですからね。かわいいですよ。

ーー 確かにそうかもしれないですね。

普段も学校で、自分の良さとか、お友達の良さとかを見つけるようにしましょう、っていう話をよくするんですよ。実はそれは子どもに言ってるんじゃない。先生に言ってるんです、私は。
子どものこういうところがかわいい、と思えるパターンみたいなものが少ない。というか、見て取れない。あんなにかわいらしい行動を取ってるのに、黙殺しちゃう、見過ごしちゃう先生が多いかな。
色んな先生たちと、あの子のこんなところが可愛いよねっていう話を、しょっちゅう話すようにしてます。それで、先生たちに、ああ、こういうところも良さなんだ、こういう見方もあるんだ、っていうことを感じて欲しいんですけどね。

ーー それは保護者にも言えることかもしれませんね。

やっぱり、近いところからみてると、どうしてもね。こっちは、離れたところから、というか、ある程度終わったところから見てるから、何しててもかわいいじゃない(笑)。じじいになってきた、っていうね。

ーー 子どもが小さい時、なんであんなに怒ってたんだろう?って今になって思うことあります。写真を見返すと「可愛い!」しかないんですけどね。

怒ってたの?

ーー 怒ってたと思いますよ、やっぱり。いつもやって欲しくないことばっかしてたような気もするし。スーパー行けば逃げてって、しょぼーんとしてお店の人に保護されてたりとかしてて「もー!」みたいな。

それでいいじゃない(笑)


校長になるつもりは…


ーー 校長を目指されたのは、いつごろなんですか?

校長になるなんて、本当は、そんなつもりなかったんですよ。
ある時期、すごくお世話になった先生がご退職されて、暇だって。毎日「水島さん、今日暇?」なんていう電話がかかってくるんですよ。飯能の小料理屋とか呼ばれるんですよ、毎日。
その方は、後輩を育てるために管理職試験のための勉強会を開いたりされている方で。それで、その勉強会に「来い」と。「嫌です」って。
でも、毎日のようにご馳走になっているうちに、流石にもう断れないかな、と。
3回だけ試験受けてみます、って言って。で、その3回目で教頭受かっちゃって。
そしたら、教頭で終わるのも何だな、ということで、校長の試験も受けて、今に至ります。
その方は、私が校長になった年に亡くなってしまったので、恩返しということでもあるんですけど。

ーー そうだったんですね。すごく向いてると思いますけど。

本当はやりたくなかったんですよ。教室で子どもと直接対面するのが面白かったから。

ーー 確かに、こんなに子どもと距離が近い校長先生は、なかなかいないと思います(笑)。

そうかもしれないですね。本当にありがたいことです。ご家庭で飼ってる犬の名前まで知ってますから(笑)

ーー 名栗小に赴任する以前にも、校長はやられていたんですか?

やってないです。ここだけ。
もともと名栗は好きで、30年以上通ってて。それこそ、鮎を手づかみしたりとか、山菜を取りに行ったりとかをしてて。
いつか名栗に来たいな、という思いはあったんですけど。たまたまです。校長として、ここに来ることができて。
よかったです、ほんとに。
保護者の方も、地域の方も、みなさん協力的ですもんね。

ーー 主張の強い保護者も多いですけどね(笑)

いや、もちろんそういうところもあるんだけど、だからこそおもしろいんです。
こうやって、自分の信じる価値観とかを、どうでしょう、って出した時に、色んな反応が返ってくる。
えっ?って思うことだったり、こういう考え方もあるのか、なるほどね、みたいなことっていっぱいあるわけじゃないですか。

ーー 人数が少ないからこそ、1人ひとりが言いやすい、っていうことはあるかもしれませんね。

そうそう。どんどん言ってもらえた方が、学校も変われるきっかけをもらえる。
そこも含めて、やっぱり協力的ですよ。
もともと、地元の人たちがそうだし、移住組のみなさんも、すごく協力的だし、やりやすいですね。

ジグザグに並んでみてもいいんじゃない?


ーー 宿題のこともそうですけど、当たり前だと思われていることを変えるって難しいですよね。

それは、実際に動いてくれる先生が、いかにその考えに賛同してくれるか、というところにかかっているので。一番難しいのは、先生たちに、そういう意識になってもらう、変わっていってもらう、というところ。
今まで、当たり前のようにやってたことで言うと、子どもを背の順に並べるのもやめようってことにしたんです。あれ差別だよ。

ーー 確かに!背の順である必要ないですね。特に疑問に感じたこともなかったです。

背の順だと前が見やすいとか、理屈があるんだけどさ、同じくらいの身長の子がまっすぐ並んだって、それ、見えないから!
だったら、こうやってこうジグザグになった方が合理的じゃないですか。

ーー ほんとだ!

そう!こっちの都合なんですよ。気持ちがいい、とか、言うこと聞かせたい、とか。思い通りに子どもを動かすのが快感な先生っているんだよね。「前へならえ」も必要ないよ、なんて思うんだけど。話聞いてくれればいいんだからさ。こっちおいで、って言って。なんとなく居てくれればいいわけじゃないですか。

ーー 大切なのは、形通りにやることじゃないですもんね。

「気をつけ、礼」だってそうだよ。あれも、決まったことを言うだけになっちゃってるわけ。よし、今から始まるぞ、っていうのがわかんないとダメなのに、なーんにも、周り見ないで「気をつけ〜礼〜」って言ってるだけだから、そういうのはヤだよね。
そもそも、礼はいらないから。俺の授業では、やらない。じゃ、始めるよ~って言って始めちゃう。みんなやりたがるんだけど。

ーー 先に形として身についちゃうと、意味が見えなくなっちゃうってことあるかもしれませんね。

そうそう、それが当たり前で育ってきちゃっているから。子どもも、先生も。
みんなやってきたこととか、やられてきたこととか、変えにくいんだけど。
でも、俺らは子どもを育ててるわけですから。そこを一番に伝えなきゃいけないはずなんだけど。


ーー 「当たり前」に疑問を持ち続けるってすごいことだと思います。

いえいえ。

ーー 「当たり前」とは逆に、変わり続けるもの、世の中の価値観というか、最近で言うと「多様性」みたいなことが言われるようになったり、そういうところにアジャストしていくのも大変なのかなと思うんですけど、そのあたりはどうですか?

それは、世の中の価値観にアジャストしてるつもりはなくて、新しい価値観がいろいろ出てくるなかで、そうだよなって思ったものを使わせてもらっている、っていう感覚ですかね。

ーー 時代が、先生に追いついてきてる、ってことではないんですか?(笑)

いやいや、そういうことではないんだけど(笑)

こういう価値観が大事なんです、って教えてもしょうがない。
やっぱり、1人ひとりの、その子の良さを損なわないような学校にしたいな、と思っていて。
きっとこれからも、そこは変わらないし、今頑張っているところ。
皆さんに分かってもらえるようにやってるつもりなんだけど、まあ無理だなー。ずーっとやってますよ(笑)

ーー きっと、子どもたちには伝わっていると思いますよ。1人ひとりが大切にしてもらっているから、友達のことも、同じように大切にできるんじゃないですかね。名栗の子を見てて、みんなほんとに優しい子だなーと思いますもん。

そこはやっぱり、名栗小の良いところ。
でも、勉強はできるようにならないよ、言っとくけど(笑)

ーー (笑)子どもたちをテストの点数で評価するっていう価値観も、いつまでやるのかなって思いますけどね。

難しい話になっちゃいますけど、俺は一斉教授型の授業、こうやってみんなに教える、みたいな授業でずっと育ってきたし、俺もやってきたんだけど、あれはなんて言うんだろうなあ、要は習って言うことをきく、単純労働作業が得意な人間を育てるというか、言われたことをきちんとこなせるようになる、みたいな。そういう仕事なくなっちゃうと思うから、これから。

ーー ほんと、そうかもしれませんよね。

そういうのはもうAIがやってくださるので、クリエイティブなお話とか、こうやって、コミュニケーション取りながら問題を解決するとかっていう授業に転換していかなきゃいけないと思うんですけど、そうやって言ってはいるんだけど、なかなかそこまではいけてない。

ーー 今は、そこにたどり着くための基礎作りをされてるのかな、とは感じてますよ。

授業についても、言いたいことが山ほどあるんだけどさ。

…って、まだ大丈夫?そろそろ帰って夕ご飯の準備とか。

ーー ほんとだ!じゃあそろそろ…。

何度来て頂いても構わないですよ。こういう話ができる機会が、実はあんまりないのよ。

ーー そうですね、お話の内容もですけど、こうしてじっくりお話し出来たことも、とても良かったです。

次は、若い先生も連れてこようかな。

ーー それはいいですね!こちらもメンバー入れ替えたりしながら。

じゃあ、また。待ってます。

ーー 今日はありがとうございました!
では、「起立〜、気をつけ〜礼〜」

だから、それいらないんだって(笑)

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やまもと

なぐりで.編集長 / カメラマン

2022年に名栗に移住しました。妻と、2人の子どもと暮らしています。 普段は映像のカメラマンとして、主に都内近郊で仕事をしています。

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