子育て移住するなら、名栗で。

名栗で 暮らす

味噌を作る

「タイムカプセルみたいだね。」

味噌を仕込んだ木樽の封となる米袋に、作業に携わった全員が、代わる代わる名前を記していきます。
その様子を見て、子どもが、そう呟きました。

先ほどまで、わいわいと賑やかだった作業小屋は、いつの間にか、静まり返っていました。
みんなで味噌を仕込んだ木樽は、これから封をされて、8ヶ月間の時の旅に出ます。
長年にわたって使い込まれ、麹菌の棲みついた木樽は、過去と未来を繋ぐ生命のカプセル。その場にいた誰もが、本能的にそのことを感じていたようでした。

木樽を見つめる、子どもたちの眼差し。
あるがままの時の流れに沿う営みの美しさ。
全てを柔らかな光が包み込む、そんな春の日の昼下がり。

無事に全工程を終え、結びの万歳三唱で再び賑やかさを取り戻した作業小屋は、何とも言えない高揚感と幸福感に満たされました。


2024年3月20日(春分)
本日、名栗小の子どもたちと手作り味噌を仕込みました。
今回は、名栗の手前味噌作りの様子を紹介します。


ご協力いただいたのは、笑美亭の中村さん


今回の味噌作りは、名栗の民宿 笑美亭(わらびてい)のご主人である中村さんに、全面的にご協力いただきました。
20年前、知り合いのおばあちゃんの手作り味噌の美味しさに衝撃を受けたことがきっかけで、以来試行錯誤を続けながら、毎年味噌作りを続けていらっしゃいます。
味噌を作るための材料は、大豆、塩、そして米麹。おいしい味噌を作るために必要なだけの、手間をかけ、時間をかける、昔ながらの味噌づくり。

その始まりの工程、米麹作りの様子から取材させていただきます。


全てはお味噌さまのために

味噌作りのために建てられた、中村さんの味噌小屋

早朝5時。すでに中村さんの味噌小屋からは竈門の煙が立ち上っていました。
扉を開けるとそこには、豪快に薪を燃やし、飯能の農家さんからの頂き物だという江戸時代の羽釜で、ぐつぐつと湯を沸かす中村さんの姿が。

おはようございます!

お米が蒸し上がるまでの間、中村さんの味噌作りへのこだわりについてお話を伺います。

そう。これは近所の蔵を解体する時にもらってきたもんでね。で、この鉄の羽釜。人間の料理の道具はね、鉄か土鍋がいいんだよね。

燃料も薪がいい。薪から出るエネルギーはプラスのエネルギーだし、何より無駄がない。

そもそも味噌は、廃棄物を使った加工品なわけですよ。今蒸してる米も、結局麹のエサになるものだから、上等な米である必要はない。昔の人たちが、そういったものをうまく利用して作った保存食なんですね。
この小屋だってそう。元々うちの親父が持ってた山があって、そこの倒木を製材した材料を使って、全部バラバラのバラエティカットの材料なんだけど、それで建ててある。無駄なものなんて、なにもないんですよ。

そう、全てはお味噌さまのためだね。この小屋には麹菌が棲みついてる。それがすごく大事。味噌作りの最初は屋外で作ってたんだけど、なんじゃこりゃっていうのが出来たりね。まあ色々試しましたよ。この木樽もそう。色々作ったけど、この樽で、木樽で作る味噌が1番美味しいんです。



豪快に笑う中村さんの仕事は、丁寧で美しい

「麹は生き物だから、イライラしながら作業しちゃダメ。やっぱり伝わっちゃうのよ。ご機嫌を伺いながら、快適に生活できるように、先回りしてお世話しないといけません。カミさんには、その情熱を私に向けろって、よく怒られるんだけどね。ワッハッハ。」

そんな話をしているうちに、どうやらお米が蒸し上がったようです。
気づけば、すっかり夜は明けていました。

ここからは、蒸し上がったお米に、麹菌を付けていきます。麹菌は高温下では生きられないので、まずは麹菌が心地よいと思う温度になるまで、お米の粗熱を取っていきます。

蒸し上がったお米は、麹菌が食べやすいように、芯まで柔らかく。

やさしくやさしくほぐして、均一な温度になるように冷ましていきます。

麹菌を少しずつ丁寧に振るう所作は美しく、何か魔法をかけているよう。

中村さん手作りの発酵機。麹の皆様には、しばらくの間、ここで快適に暮らしてもらいます。

季節や天気に応じて、細やかな調整ができるようになっていました。


さて、本日の作業はここまで。
丁寧に時間と手間をかけて作業する、中村さんの手つきや眼差し、話しぶりから、味噌作りに対する想いが伝わってきました。

米麹が完成するのは、5日後。
名栗小学校の子どもたちとの、味噌作り会の日です。
(次ページへ続く)

1

2
  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

やまもと

なぐりで.編集長 / カメラマン

2022年に名栗に移住しました。妻と、2人の子どもと暮らしています。 普段は映像のカメラマンとして、主に都内近郊で仕事をしています。

  1. 遊びは学びだ

  2. 教えて!校長先生!#2

  3. 味噌を作る

コメント

この記事へのコメントはありません。

RELATED

PAGE TOP